奨学金も、債務整理をすることができます。ほかの貸金業者などの借入先と同様に、債務整理の方法を選ぶことができます。
方法としては、任意整理・個人再生・自己破産があります。債務整理以外の方法として、奨学金の救済措置もありますので、順番に見ていきましょう。
このページの目次
1.任意整理
任意整理とは、借金の利息や遅延損害金の免除、将来利息のカットなどを貸金業者と交渉する債務整理手続きです。
しかし、奨学金を任意整理するのは、得策ではありません。
奨学金はもともと無利息か低利息なので、将来利息をカットすることが目的の任意整理をしても、それほど金額が大きく変わりません。
それどころか、たいして返済も楽にならないのに、債務整理をしたことにより信用情報(ブラックリスト)に名前が載り、保証人にも一括請求がいくこととなります。
任意整理のメリットは債務整理する借入先を選べるということですので、任意整理を検討される場合は、奨学金以外の借金を任意整理して(ブラックリストには載ってしまいますが。)「奨学金以外の借金の毎月の返済額を減らす」、そして「奨学金は今までどおりに払っていく」、のがよいでしょう。
そうした場合は、ご両親などの保証人へ迷惑をかけることも、債務整理をしたことがバレてしまうこともありません。
任意整理では返済が困難だという方は、個人再生か自己破産を検討することになります。
個人再生と自己破産は、債務整理する借入先を選べないため、奨学金も対象となります。
2.個人再生
個人再生は、借金の総額を、5分の1から10分の1程度減額してもらえる、裁判所をとおして行う債務整理手続きです。
ただし、減額された残りの借金について、保証人に請求がいくことになります。
保証会社の場合は、保証会社に一括請求がいきます。
信用情報(ブラックリスト)への登録期間は、10年間です。
3.自己破産
自己破産は、借金の全額免除を裁判所に認めてもらう手続きです。
奨学金も0円になります。
信用情報に登録される期間など、デメリットは個人再生と似ていますが、自己破産は本人の返済義務がありません。
全額、保証人や保証会社に一括請求がいきます。
4.奨学金の救済制度ってなに?
奨学金は、借りた団体によって、返済が難しくなってしまったときのための救済制度があります。
奨学金の返済を滞っていなければ、債務整理手続きとは違って、信用情報(ブラックリスト)に載ることもなく、返済の負担を軽くすることができるので、奨学金の返済が難しくなってきたら、まず救済制度について調べるとよいでしょう。
奨学金以外は借金がない方や、借金が少額な方にとっては有効な手続きですので、いちど以下の方法を検討してみてください。
ここでは、日本でもっとも多く利用されている、「日本学生支援機構の救済制度」について、ご紹介します。
日本学生支援機構(JASSO)には、毎月の返済額を減らしてもらえる「減額返還制度」と、返済を待ってもらえる「返還期限猶予制度」があります。
減額返還制度について
返済期間を延長して、毎月の返済額を2分の1から3分の1に減額してもらう制度です。
返済の総額を減らすことはできませんが、期間を延ばしてもらうことにより、月々無理のない支払いにすることができます。
最長15年間、1回の申請で12か月まで申請ができます。
ただし、すでに奨学金を延滞している方は、利用することができません。
返還期限猶予制度について
返還期限猶予制度は、「一般猶予」と「猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予」の2種類があります。
- 一般猶予
最長10年、奨学金の返済を待ってもらえる制度です。こちらは、奨学金をすでに延滞している方も利用することができますが、審査が必要です。
- 猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予
猶予年限特例と所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予は、奨学金を申し込むときに選べる奨学金の種類です。
申請して、一定の収入を得ることができるようになるまで、返済を待ってもらえます。
適用期間に制限はありません。
救済制度を利用しながら、ほかの借金を任意整理することも可能です。
5.奨学金を延滞するとどうなる?
奨学金を延滞した場合、以下のデメリットがあります。
- 信用情報(ブラックリスト)に氏名や住所が載る
奨学金を3か月以上延滞すると、ブラックリストに登録されます。ブラックリストに登録されると、クレジットカードやローンが利用できなくなるなどデメリットがあります。
- 延滞金が発生する
奨学金に、もともと利子がある場合はもちろんですが、無利子の場合でも、返済が遅れた場合は延滞金が発生します。
- 自宅訪問や、自宅や会社に督促の電話がかかってくる
債権回収会社が自宅にきたり、督促の手紙や電話がかかってくることがあります。場合によっては、会社にかかってくることもあります。
それでも返済がされない場合は、給与や財産の差押えが行われます。
救済措置の内容は、それぞれの団体によって違います。このような状態になってしまう前に、まずは救済制度について奨学金団体に確認をしてみましょう。
延滞をすることによって、利用できる救済制度も限られてしまいます。返済が難しくなってきたら、問題が深刻化する前に、はやめに弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。