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受任通知の効果と、注意点について
弁護士や司法書士に債務整理の依頼をする場合は、まず委任契約を締結します。
委任契約締結後、当事務所では、原則当日か翌日に、各債権者に受任通知を発送します。
受任通知とは、弁護士や司法書士などの専門家が、債権者(貸金業者など)に対し、これからは当事務所が、債務者(お金を借りた人)の代わりに債務整理をするので、今後は本人に直接連絡をしないように、と、通知をするものです。
そのことにより、借金の取り立てや請求が、一時的ではありますがストップします。
受任通知を送ることができるのは、弁護士や司法書士などの専門家だけです。
受任通知を送付すると、メリットのほかに注意しなくてはいけないこともあるので、事前に対処しておくことが必要です。
実生活でどのような影響があるのか、詳しく見ていきましょう。
- 受任通知の記載内容
- デメリット、注意すること
まず、受任通知には、具体的にどのようなことが記載されているのでしょうか。
大きくは、以下の4つになります。
受任通知の記載内容
- 今後は司法書士があいだに入り、債務整理の交渉や手続きをすること
- 債務者に、借金の取り立てや請求など、直接連絡をしないようにということ
- 取引履歴の開示を求めること
- この通知が、時効中断事由のひとつである債務承認には当たらないということ
更に細かくいうと、債務者がだれかを特定できるように、債務者の氏名、住所、生年月日を記載するのが通例です。
ただし、ヤミ金などの違法業者の場合、住所を開示してしまうと、自宅に取り立てにくることがありますので、氏名や生年月日以外は通知せず、住所の特定はできないように送付するのが一般的です。
受任通知は、単に債務整理を受任したということを通知する意味しかないわけではなく、サラ金・信販会社等の貸金業者や債権回収会社(サービサー)から、電話・FAX・訪問などの直接の取り立てを禁止するという、法律上の効果を持っています。
その規定に違反した場合には、懲役や罰金などの刑罰も科されることになっています。
ただし、裁判手続きによる貸金回収は除きます。また、受任通知を送ることによって禁止されているのは、直接の取り立てです。そのため、裁判手続きによって返済を求められる可能性はありますので、受任通知送付後も、差し押さえなどされる可能性があることは、注意しておきましょう。
その場合は、事前に弁護士や司法書士に連絡がくることがほとんどですので、これからの方針について、よく相談するとよいでしょう。
今までの経験から、受任通知送付後もご本人に請求がきたということは、まずありません。
万が一連絡がきた場合も、弁護士・司法書士にご連絡をいただければ、すぐに債権者へこちらから問い合わせをしますので、その後請求がいくことはなくなります。
ただし、金融庁の管理下にない個人や取引先などの債権者は、法律上の取立てが禁止されていませんので、注意が必要です。
もっとも、ほとんどの債権者は受任通知が送られてくると取り立てを停止しますので、借金で頭がいっぱいだった生活から抜け出し、請求や督促から解放され、安定した生活を過ごすことができるようになるでしょう。
もし、受任通知送付後に取り立てがあった場合も、返済をする必要はありません。対応する前に、弁護士や司法書士に相談しましょう。
債権者によっては、一定期間返済を待ってもらえる場合があるのも大きなポイントです。落ち着いた生活のなかで、再建の第一歩を踏み出すことができるようになります。
それまで返済に充てていた分は、弁護士や司法書士への報酬費用として積立ておきましょう。
・デメリット、注意すること
弁護士や司法書士に債務整理を依頼すると、受任通知が送付され、そこから借金の督促はなくなります。しかし、それは一時的なことであり、メリットもあればデメリットもあるのが債務整理です。
受任通知を送ることでどのような影響があるのか、債務整理を依頼するときには弁護士や司法書士とよく相談して、以下の点を注意しておきましょう。
・ブラックリスト(信用情報機関)に、登録される
受任通知が送付されると、いわゆるブラックリストに事故情報として氏名などが登録されます。
登録期間は、任整整理は5年、個人再生や自己破産は10年です。
ブラックリストに載ると、クレジットカードやローンが利用できなくなったり、賃貸住宅の審査にとおらなくなる可能性があります。
ブラックリストについては、各債務整理(任意整理・自己破産・個人再生)のページに詳細が記載してありますので、そちらも併せてご覧ください。
・口座が凍結される可能性がある
銀行や系列会社からお金を借りている場合、受任通知送付後は銀行口座が凍結され、借金と預金を相殺されてしまいます。
その口座が給与振込先だった場合、振り込まれた給与が全額借金返済に充てられてしまい、生活に困ることとなってしまいます。
弁護士や司法書士に依頼する前に、銀行預金は引き出し、当面の生活費などを確保しておきましょう。また、水道光熱費、電話料金、給与振込先口座を必要に応じて変更しておくとよいでしょう。
あと、債権者への返済が口座引き落としだった場合、債権者が引き落とし停止手続きを行う前に引き落とされてしまう可能性がありますので、預金口座からお金を引き出しておくことも必要です。
任意整理の場合は、債務整理をする債権者を選ぶことができるので、その銀行を任意整理から外すことで口座凍結を防ぐことができます。
・保証人や連帯保証人に一括請求が求められる
保証人や連帯保証人がいる場合は、債務整理をすると保証人や連帯保証人に債務(借金)の支払い義務が移るため、保証人に一括請求がいきます。
そのため、債務整理を検討したら、経緯や状況をあらかじめ伝え、相談をしておきましょう。
任意整理は債権者を選ぶことができるので、保証人を立てているところを外すことで、保証人が請求されるのを防ぐことができますが、自己破産や個人再生は避けることができません。
ただし、任意整理を予定していたときに、一方は返済をストップして、一方にだけ返済をした場合、あとから裁判所をとおす手続きに移行することになったとき、「偏波弁済(へんぱべんさい)」とされる可能性がありますので、弁護士や司法書士によく相談したほうがよいでしょう。
現在の収入では完済が難しいほど借金を抱えていて、毎月の返済に追われている方は、ひとりで悩まずに、できるだけ早く弁護士や司法書士に相談にいくことをおすすめします。
正式に依頼して、受任通知を送付してもらうことができれば、督促が止まり、一時的に返済もストップしますので、取り立ての不安を解消して平穏な生活を取り戻すことができます。
借金が返せないほどお金に困っている方にとって、弁護士や司法書士への費用は容易でないですが、弁護士や司法書士もそのことは十分にわかっているはずですので、分割払いや後払いに対応してくれる事務所もあります。
多くの弁護士は、借金問題についてはもちろん、債務整理費用の支払いについても無料で相談に応じてくれます。
借金返済に困っている方はおひとりで悩まずに、債務整理に詳しい経験豊富な弁護士や司法書士にいちど相談してみると、新しい生活の第一歩となるかもしれません。