過払金とは、簡単にいうと「お金を借りたひとが、貸金業者に返しすぎたお金」のことをいいます。
お金を借入するには法律で利息の上限が定められていますが、以前は、「利息制限法」が20.0%に対して、「出資法」という別の法律では29.2%と違う利息が定められていました。
利息制限法を超えて貸しても罰則はありませんでしたが、出資法を超えて貸すと罰則があったため、多くの貸金業者は出資法の上限である29.2%でお金を貸していました。
2010年6月に貸金業法と出資法が改正されて、上限金利は利息制限法で定められていた20%に統一されることとなりましたが、それまでの利息制限法(20.0%)と出資法(29.2%)の上限金利の差(グレーゾーン)が、払い過ぎた金利、つまり過払金であり、貸金業者に返還請求をできるようになったのです。
長年借金の返済を続けている方は、過払金が発生している可能性があり、過払金請求をして得たお金により、借金を完済したり減額することができます。
いちど、過払金が発生しているか、相談してみてはいかがでしょうか。
このページの目次
・過払金が発生している可能性の高い方とは?
- 2010年(平成22年)6月17日以前に借入をしていた
- 借金を完済してから、10年以内
- 借入と返済を5年以上繰り返している
1.2010年(平成22年)6月17日以前に借入をしていた
貸金業法の改正前(2010年6月17日まで)、貸金業者や消費者金融は、「グレーゾーン金利」という金利を設定し、利息制限法の上限を超える違法な金利を受け取っていました。
それまでの、違法な利息で借入れをしていた期間の分の返済、返しすぎていたお金のことを、過払金といいます。
2010年6月18日の改正賃金業法完全施行により、出資法の上限金利は20%になり、グレーゾーン金利は撤廃されていますので、請求ができるのは、それまでに借りていた分ということになります。
2.借金を完済してから、10年以内
過払金には、時効があります。
借金を完済してから10年経過すると、時効が成立して過払金が請求できなくなります。
過払金の時効は、「最後の取引(借金を完済したときなど)から10年」と、最高裁判所で判決が出ています。
そのため、引き直し計算をした結果、過払金が発生していたのが10年以上前だったとしても、その債権者との最後の取引から10年経っていなければ、過払金の請求ができると考えられるため、過払金が発生している可能性が高いといえます。
※法改正により、2020年4月1日以降に完済した場合、時効は「最後に返済した日から10年」、または、「権利を行使できることを知ってから5年」に変更となったので、注意が必要です。
3.借入と返済を5年以上繰り返している
何年間借入と返済を繰り返していれば過払金が発生しているかは、借入の状況や返済額などにもよるので一概にはいえませんが、取引年数が5年以上ある場合、半数ほどの方が、過払金が発生する傾向にあるということがわかっています。
10年以上では、ほとんどの方が過払金を受けることができたうえに、借金まで返済することができているのです。
そのため、5年以上借入と返済を繰り返している方は、過払金が発生している可能性が高いでしょう。
・過払金の時効
過払金は、最後に取引した日から10年が時効期限
過払金には、時効があります。いつまででも請求できるわけではありません。
過払金は、最後に借入・返済をした日から10年が経過すると時効で消滅してしまうため、請求できなくなってしまいます。
2009年1月22日最高裁で、時効の開始日は、「特段の事情がない限り、取引が終了する時点から起算」という判決が出ていますので、最後に取引をした日から数えることができます。
しかし、2020年4月1日に民法が改正されてからは、2020年4月1日以降に完済した場合、時効は10年、または権利が行使できることを知ってから5年に変更となりました。
例えば、
2020年4月1日よりも「前」に借金を完済
2000年に借入、2020年3月に借金をすべて返済した場合。
過払金請求ができることを前から知っていたとしても、過払金請求の時効は、完済した2020年3月から10年後の2030年3月です。
2020年4月1日よりも「あと」に借金を完済
2000年に借入、2020年5月に借金をすべて返済した場合。
2020年5月に過払金請求ができることを知った場合、過払金請求の時効は、まだ完済から10年経っていないけど、2020年5月から5年後の2025年5月です。
理由は、うえでご説明したとおり、2020年4月1日に民法が改正され、この日以降は、過払金請求ができることを知った日から5年後にも時効が成立すると変更になったためです。
・過払金請求をするデメリット
過払金請求は、もともと払いすぎていたお金を返してもらう手続きなので、基本的にリスクはありません。しかし、いくつか注意点があります。次は、デメリットと、その対処法を詳しくみてきます。
・借金を完済している
完済している場合、リスクはほとんどありません。
まだ手続きをしていない場合、返還請求先の貸金業者が倒産をしてしまうと、過払金の請求はできなくなってしまいますので、早めに請求したほうがよいでしょう。
また、過払金請求をしたことによる郵送物などが自宅に届くことになりますので、書類を見られてしまったり、交渉が書類だけで済むことはまずありませんので、交渉の電話を聞かれて、家族などに過去の借金がばれてしまう可能性はあります。
弁護士や司法書士に依頼した場合は、そのリスクを防げますので、そういった意味でも、弁護士や司法書士に依頼をすると安心でしょう。
・借金をまだ返済中
過払金請求をしたい貸金業者にまだ借金を返済中の場合は、いくつか注意しなくてはいけないことがあります。
- ブラックリストに載る
- クレジットカードやETCが使えなくなる
返済中の貸金業者に過払金請求をした場合、ブラックリストに載ることがあります。貸金業者によります。
ただ、過払金請求は、請求先を選ぶことができますので、リスクのある貸金業者は、過払金請求先から外すことで、ローンの請求などもとおすことができます。
クレジットカードを使い続けたいという場合は、過払金請求をしない会社で事前に新しくクレジットカードを作っておくとよいでしょう。
また、ETCカードは、ETCパーソナルカードというものを作ることで代用できます。
・時効が成立していると思っても、まだ請求できるかも?
・借金をまだ返済中
・返済と完済を繰り返している
返済中の場合は、まだ完済していませんので、うえでご説明した時効の条件はあてはまりません。
ただし、返済を途中で放置してしまっている場合は、最後に返済した日から10年が経つと時効を迎えて過払金請求はできなくなります。
・返済と完済を繰り返している
同じ貸金業者でも、返済と完済を繰り返している場合、1回目の借入を完済したのが10年以上前でも、2回目の完済から10年経っていない場合は、一連の取引とみなされて、過払金請求ができることがあります。
一般的には、取引のない期間が、半年以内程度であれば、「連続したひとつの取引」とみなされやすく、1年以上だと「別々の取引」とみなされることが多いといわれています。
・不当利得返還請求とは?
過払金請求のことを、法的に、不当利得返還請求(ふとうりとくへんかんせいきゅう)といいます。
民法703条では、「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」と、定めています。
つまり、不当利得とは、法律上受け取る権利がないにもかかわらず、受けとった利益のことです。
過払金は、利息制限法の上限金利を超える利息を支払わされてしまった場合に生じた、不当利得のため、これを返還してもらうということです。
返還分が借入の額を上回っていれば、過払金で借金が完済できますし、全額に充当できなくても、減額することができます。
更に、不当利得には、借入(借金)をしたときのように、その発生した過払金に利息をつけて返還する義務がありますので、きちんと交渉すれば、過払金と利息を返還してもらうことができます。
・過払金の時効を止めるには
「あと少しで時効になってしまうから、いまから弁護士や司法書士に相談しても間に合わないのでは」という場合、時効を止める方法があります。
・貸金業者に、過払金の請求書を送付する
貸金業者に、「内容証明郵便」で過払金の請求書を送付します。そうすることによって、時効のカウントを6カ月間ストップすることができます。
ただし、取引履歴の開示を依頼しただけでは、カウントは止まりません。
引き直し計算をして、その結果を請求書に表示しなくてはいけないため、取引履歴の開示をして安心してしまうと、開示請求をしたときには時効は成立していなかったのに、計算中に時効が成立してしまうという可能性があります。
そのための引き直し計算には、専用ソフトもあるのでご自身で計算することも可能ですが、迅速かつ正確な計算が必要になりますので、弁護士や司法書士の力を借りることも検討するとよいでしょう。
・裁判所に、訴訟を提起する
過払金請求は、裁判を申し立てることもできます。
申立てが認められると、時効がいったんストップして、時効が10年延長されます。
ただし、裁判を起こすには事前にさまざまな準備が必要ですし、法律的な知識も必要になってきます。
申立て準備中に時効を迎えてしまうと過払金請求ができなくなってしまうので、時効が迫っている場合は、特に、弁護士や司法書士に相談されたほうが確実でしょう。
また、以前大手の貸金業者が倒産したように、その会社がいつまでもあるとは限りません。時効が成立していなくても、手続きをしているあいだに貸金業者が倒産してしまった場合は請求ができなくなってしまいます。
時効の請求は、なるべく早く弁護士や司法書士に相談して対処することをおすすめします。
・弁護士や司法書士に依頼するメリット
相手は貸金業者などその道のプロですので、法律知識や法改正など、専門家でない個人との知識の差は歴然です。
弁護士や司法書士が交渉にあたっても、貸金業者はどうにかして減額しようと、「悪意の受益者」であることを主張してきたり、債務者が、高利率であることを知って支払っていたといってきたり、過去の判例を例に持ち出してきたりなど、いろいろと反論してきます。
弁護士や司法書士であれば、すぐに対応することができますし、当事務所でも、こういった主張をされることはよくありますが、反論することにより提案どおりの過払金を得ています。
交渉がまとまらず訴訟に移行することも多いですが、その場合も、そのまま引き続き交渉・訴訟対応をしてもらうことができます。
やりとりの中に法律知識が多く必要になってきますので、個人で交渉を行っても、利息はもちろん、満額の過払金を返還してもらうことは難しいでしょう。
実績のある弁護士や司法書士事務所に依頼することが、結果としてご自身の満足いく結果につながりますので、過払金があるかもしれないと思われたら、まず弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。